農薬に頼らないブドウ栽培や防腐剤の添加を最小限にするなどして造られたワインは、「ビオ・ワイン」、「自然派ワイン(ヴァン・ナチュール)」、「オーガニック・ワイン」などと呼ばれることがあります。
それぞれに明確な規定はありませんが、ヨーロッパにおいては、自然派農法を認定する「エコセール」、フランス国内においては「ナチューレ・エ・プログレ」といった認証機関があります。
自然派農法
自然派ワインで用いられるブドウ栽培農法には下記のようなものがあります。
リュット・レゾネ(減農薬農法)
農薬の散布等を最小限に留めたブドウ栽培です。有機農法に限りなく近い方法がなされ、雨と湿度によってカビの被害が出そうな時な等に、最小限の防カビ剤を使うなどされます。
ビオロジック(有機農法)
除草剤や化学肥料、殺虫剤を使用しないブドウ栽培です。
ビオディナミ(バイオダイナミック農法)
ルドルフ・シュタイナー博士によって提唱された農法です。有機農法に加えて、天体の動きなどの「占星術」に応じた農業歴や、独自の調合剤の散布などによって農作業が行われます。(ビオディナミ wikipedia)
醸造・瓶詰め
醸造や瓶詰め行程においては下記のような手法がなされます。
- 二酸化硫黄などの酸化防止剤を無添加、もしくはごく僅かに抑える
- 天然酵母を使用する(収穫時にブドウに付着している酵母をそのまま利用する)
- 補糖や補酸を行わない
- 無濾過、無清澄、無着色
- その他、特殊な醸造技術を用いない
批判的意見
自然派ワインというカテゴリー自体が、「個性の無いワインを売るためのマーケティング」であるという意見があります。
その背景には、フランスをはじめとするワイン伝統国において、自然派ワインの熱が高まったのが高級ワインの産地ではなく、主に並級ワインを生産する産地に多かった事に起因しています。
また、「自然派ワインは頭が痛くならない」「自然派ワインは悪酔いしない」などの噂に根拠が無いなどの批判的な意見もあります。
高品質ワインと自然派ワイン
フランス・ブルゴーニュ地方においては、最高峰ワインを造るとされる生産者の多くは、今では当たり前のように自然派農法が採用されています。
それは、第2次世界大戦以降に、ブルゴーニュ地方においても生産性や効率性を重視して除草剤や農薬を使用した結果、ブドウ畑の微生物の減少や、カリウム肥料によるブドウの酸度の減少などが起こってしまい、その反省があり、1980年代頃からいわゆる自然派農法への回帰がなされた結果です。
ワイン醸造行程においても、高級ワインの多くでは、ワインの複雑性を重視した伝統的な醸造方法が採用されています。
これらは管理する畑のテロワールへの敬意と、最高のワインを造るためになされる探求の結果であり、こういった生産者達はわざわざ自然派であることをアピールしないことがほとんどです。